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透析を始めたばかりで落ち込む患者の対応

こんにちは、あきです。

やっと風邪がなおりました。熱は出ないのに喉がひたすらに痛く。
声も出ないため患者とのコミュニケーションが大変で大変で。
心配する側のわたしが心配されるという始末。


普段から患者さんとのコミュニケーションをとっているからこそ、何かあったときに心配していただけるんでしょうね。しばらく顔見せないと死亡説も流れたことがあったため、毎回全患者に挨拶して回ることが日課となっております。




私が臨床工学技士になって3年目の話です。

ある患者さんが透析導入してうちのクリニックに通うことになりました。

いままで病気とは無縁の生活を送ってきた方のようで、腎不全になり透析を導入し。ほぼ同時期に糖尿病の疑いもあるとの診断を受けてとても落ち込んでおられました。

話をするたびに
「何でこうなってしまったんだろう」
「もう生きる希望がないじゃないか」
「治療なんかしなくていいんだ、死にたい」

と、言葉を漏らしていました。

しばらくしてご家庭の事情で転院されたため、その後はわかりません。いまでも気になっている患者さんの一人です。笑顔は素敵なイケメンおじちゃんだったので、いつか元気な顔をどこかで見れるといいのですが。




「透析を導入しなければいけない」

こう言われてショックを受けない人はいるのでしょうか?

病気になったショック、自分の状態を受け入れられない気持ち、混乱、不安…

実に様々な感情が患者さんを襲い、悩ませます。

ときには怒りや憎しみに変わることもあるでしょう。


そのときに私たち医療スタッフが行うことは、まず話を聞くことです。

否定せず、無視もせず。時折うなずき、繰り返しながら患者さんの気持ちに寄り添い、理解することが重要です。

わからないこと、不安なこと、困ったこと、怒っていること…どんな小さな事でも聞き取るようにします。

必要であれば医療ソーシャルワーカーや心療内科も検討しましょう。

透析を担当する医師、心療内科医、看護師、ソーシャルワーカー、臨床工学技士…

ただの悩みだと流さずに小さなことでもチーム医療で対応・傾聴し、患者や家族がスタッフに話しやすい・相談しやすい環境作りを目指すことが重要です。


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臨床工学技士と医療安全

こんにちは、あきです。

Twitter経由でこんな質問が来ました。

『今の職場でインシデントが起きても上司は困ったねで済ませ、改善しようとしない。提案しても棄却される。』

これには私も覚えがあります。

経験豊富な方々は、性格にもよりますが…経験が浅い人の話を聞かなくなるという事が多いように感じます。




私が技士になってからずっと意識し、尽力していることがあります。

それは今の、そしてこれからの透析室にとても大事なもの。

『災害対策』と『医療安全』です。

そのうちの医療安全。これは技士長になるにあたり必要なスキルであると考えます。

マネジメント。

自分の仕事だけでなく、部下の・透析室の管理をしなくてはいけない立場です。

患者にとってもスタッフにとっても安全安心な透析室にできないようでは、現場を背負って立つことはできないと考えます。




ミスが起きる現場を「困ったね」で放置してはいませんか?

部下の能力がないからだと目を背けていませんか?


部下の能力が無いと感じるなら『教育』をしましょう。

基礎を教え、考え方を教えなければ。勝手に育つわけありません。


ミスが起こる環境があるなら、そのシステムに穴はありませんか?

どんなに部下が優れていてもシステム上の穴があれば、ミスは起こります。



また、コミュニケーションがとれる環境作りも、医療事故防止の為の良い手です。

報告・連絡・相談は基本ではありますが、技士同士、技士・看護師間でのホウレンソウがしっかり出来ていないと、これもミスが起こってしまうんですね。




数年前まで、うちの職場でもミスが起こりやすい環境でした。


報告・連絡・相談がし難い
基礎的な知識・技術がない
スタッフ間のコミュニケーション不足がある
医療安全に関わる知識のあるスタッフがいない

これでもかと要因が重なり、インシデントの嵐でした。もちろん、インシデントレポートなんぞただのお飾りです。

ゆっくりと、一つ一つを改善していき、最近ではようやく風通しのよい透析室となり、インシデント発生率はグッと減しました(≧ω≦)b

4年くらいかかりましたが…(笑)


ミスを起こさない・許さない環境作りこそ、私たち上司が部下にしてあげられる最初の仕事ではないでしょうか。

医療安全は奥が深く、嫌煙しがちではありますが、人の上に立つ方々は是非とも理解を深めてみてください。

現場に反映させるには時間がかかりますが、悪い結果にはなりませんので。



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透析と貧血

こんにちは、あきです。

腎不全患者の病態ならびに合併症の一つに貧血があります。

要因としては以下のようなものがあります。



腎不全患者では赤血球の破壊が進行していることが知られています。クロラミンなどの透析液中の異常物質や血液ポンプによる陰圧の影響が関係すると言われています。尿毒症物質による影響も知られていますね。

また、定期的な採血・出血傾向による血液損失も貧血を助長させています。
腎不全患者では消化管にびらんや潰瘍が出来やすいのですが、ここからの出血があるとヘパリン使用による影響で止まりにくく、多量の血液を損失してしまいます。
また、定期的な採血・回路内の残血、透析膜からのリークなどにより血液損失があります。

腎臓からはエリスロポエチンという造血作用に関係したホルモンが産生されています。
腎不全により腎機能が低下するとこれら造血ホルモンによる赤血球産生能も低下します。




貧血を治療するにはどうしたらいいのでしょう。

1.透析を十分に行う
  透析の回数を多くする、血流量を上げるなどで血液を綺麗にし、尿毒症物質を除去します。

2.出血、採血等を減らす
消化管出血・痔などあれば治療し、同時に検査の為の採血も必要最低限の項目だけにします。透析膜が身体に合わないなどあれば、帰るのも手ですね!

3.透析液の水質をよくする
水道水の消毒に用いる塩素。それがアンモニアと反応してクロラミンが産生されます。
クロラミンは赤血球の代謝を阻害し、寿命を短くします。最近では各施設水質管理がしっかりしているため、問題視されなくなりましたが、劣化・破損などにより起こりうるので、注意は必要です。

4.投薬治療
現状、これが初手であり最善手ではないでしょうか。
ESA製剤の投与により貧血改善を狙います。
これに関しては、後日書きますね。




貧血があるとダルさ・胸が苦しい感じなど日常生活に支障がでます。
採血によりいち早く貧血傾向に気づき、原因を考慮し早期で対処したいものですね。


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透析液に含まれる酢酸。代謝経路はこれだ!

こんにちは、あきです。


血液透析では血液から余分な電解質や毒素を抜くために、また必要な成分を補充するために透析液を作成・使用しています。
現在では重炭酸透析液が使用されていますが、それ以前は酢酸透析液が使用されていました。酢酸の持つ殺菌効果によりクリーンな透析液であるといわれていたのですが、酢酸不耐症という問題も浮上したため、現在の重炭酸透析液へと切り換えられていきました。

重炭酸透析液といっても、酢酸をまったく含んでいないわけではありません
製剤上の問題ですが、原液のpH低下を防ぐために少量の酢酸が添加されています。




さて、酢酸不耐症が問題視されていたから重炭酸透析液に変わっていったのに、酢酸を含ませてもいいものなのでしょうか?

そもそも酢酸は本来、生体内に存在しています。透析液に添加されていたとしても、一定量であれば体内で代謝されます。pH調整用としては(代謝許容範囲内であれば)有用な緩衝剤として働きます。




透析液から体内に入った酢酸の代謝経路を図にしてみました。

20180927170436513.png


酢酸は、アセチルCoA合成酵素の力でアセチルCoAになります。アセチルCoAはTCAサイクル(クエン酸回路)に入り、クエン酸に。クエン酸をさらに代謝する過程で発生する炭酸ガスが重炭酸になることで、酸塩基平衡が是正されます。

現行の透析液に含まれる酢酸は限りなく少量ですが、酢酸不耐症が起こらないともかぎりません。酢酸不耐症とは…と語る前に酢酸の代謝経路を覚えておくと、先輩上司に一目置かれるかも…しれませんね!


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重症下肢虚血とは?

こんにちは、あきです。


重症下肢虚血をご存じでしょうか?

足の動脈が詰まったり細くなったりして、血流が悪くなり引き起こされる病気を下肢閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)といいます。

末梢動脈疾患はしだいに進行していく病気で、その重症度によって4段階にわけられます。



Ⅰ度: 無症状。症状を感じない、または足の冷感・しびれがある状態

Ⅱ度: 間歇性跛行。一定の距離歩くとふくらはぎが痛くなり、休むと回復してまた歩けるようになる。

Ⅲ度: 安静時疼痛。足の血色が悪く、安静にしていても痛みがある。

Ⅳ度: 潰瘍・壊疽。足に傷ができると治りにくく、潰瘍ができたり、足が腐って黒く変色する(壊疽)。




この分類のⅢ度・Ⅳ度を重症下肢虚血といい、適切な治療を施す必要があります。
透析患者や糖尿病を併発している患者では末梢動脈疾患は重症化しやすいと言われているので、早期発見・早期対処が大切になります。

●投薬治療
血液の粘度を下げる・さらさらにする薬や、血管を広げる薬の服用をします。

●血行再建術
 ・外科手術
  下肢血管閉塞部位の上下に血管(自己血管 or 人工血管)を繋いで(バイパスさせ)血液の通り道を作る手術です。

 ・カテーテル治療
  血管の狭窄部位や閉塞部位をカテーテルやステントによって膨らませ、血流を回復させる手術です。

●創傷治療
 足にできた潰瘍や壊疽などの傷は感染・壊死した組織をそのままにしておくと治りにくくなるため、除去する必要があります。
 技士が直接関わる分野ではないかもしれませんが、デブリードマン処置といい外科的切除や薬を塗り壊死組織を分解することで他の組織への影響を防ぐ処置が施されます。



また、上記投薬・外科的治療が困難かつ十分な効果が得られなかった場合はLDLアフェレーシス療法を行うこともあります。技士的にはこれがこの記事のメインでしょうか。

LDLコレステロール吸着療法に関しては、また後日。





平成28年度の診療報酬改定で透析患者に対する『下肢末梢動脈疾患指導管理加算』が新設されました。

すべての透析患者の下肢チェックをし、重症度の高い下肢虚血のある患者を専門病院に紹介する管理加算です。

今までは下肢管理は看護師が行っている施設が多かったと思います。

ですが新設された項目に準じ、臨床工学技士がフットケアに関わる施設が4月から増加傾向にあります。

当院でも、4月から技士による下肢チェックが始まりました。

LDL吸着をなぜやるのか。どんな患者に行うのか。

その管理選定段階から関わっていけたら、病院としてよりよい『治療』を提供できるのではないでしょうか。


技士だから、フットケアなんぞ知らん!!

という意見も聞きます。もちろん、わからんでもないです。


ですが患者に関することですので知らないより知っているほうが良いはずですし

下肢に関することに臨床工学技士が関わることで業務の幅を広げ、より多角的に見ることができます。

それにより質の良い医療を提供できるのであれば、やるべきです。


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